調剤薬局事務は、調剤薬局において受付や事務仕事を行います。
職種としては「事務職」になりますが、薬や保険の知識、レセプト入力など、一般的に思い浮かべる事務職とは異なる点も多いです。
薬の名前などカタカナの表記が多く、耳馴染みのない名前があり大変ではありますが、2週間も経つと慣れてきます。
医療事務系には資格もたくさんありますが、持っていなくても就業することができます。
資格を持つメリットは基本的な医療事務の知識を身につけることができることと資格手当などが付く場合もあるということです。
今回の記事では、調剤薬局事務を目指したい方に向けて、仕事内容と必要なスキルをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
調剤薬局事務の通常業務について
具体的な仕事内容は、通常業務としては主に患者さんの対応と薬剤師のサポートです。
他には処方箋を出した病院への問い合わせや患者さんからの電話対応、書類整理などの雑務もあります。
患者さんが来局されたら処方箋とお薬手帳を受け取り、処方箋データをパソコンに入力します。
この時の入力に使うのは一般的な事務で使うExcelやWordなどのソフトではなく、処方箋入力用のソフトを使います。
このデータ入力は「レセプト業務」にも関わってきます。
その都度、間違えないように注意が必要です。
一つでも間違えると代金が違ってくるだけでなく患者さんの命にかかわることもあるので慎重に取り組む必要があります。
データ入力の際には、患者さんの名前や生年月日でその方の情報を呼び出し、保健情報、薬の名前、服用回数などを入力します。
代金の計算は自動的に計算されるので難しい作業をすることはありません。
処方箋の不備などがあった場合は、処方箋を出した医療機関へ問い合わせをすることもあります。
(ここでの不備とは、保険証番号、負担割合など患者さんの情報である処方箋記載事項についてのことであり、薬の内容については薬剤師が問い合わせます。)
データ入力後、処方箋を薬剤師に渡し、薬情や薬袋、領収書、お薬手帳に貼るシールなどを準備します。
薬の準備をするのは薬剤師の仕事ですが、忙しい時や薬剤師の手が足りない時など、準備した薬が間違っていないか患者さんにお渡しする前にチェックを頼まれる場合もあります。
他にも薬剤師の補助業務として、薬剤の管理や発注をしたり、薬剤師管理の元、簡単な調剤のお手伝いなどをすることもあります。
このような作業は、基本的には国家資格を取得している薬剤師の仕事です。
無資格で調剤することは違法となる恐れがあるので、忙しい時など頼まれることもあるかもしれませんが、どこまでサポートするのか薬局内での役割をしっかり確認しておくことも重要です。
また、労災や医療費控除、高額医療申請などの書類を持ってこられた場合は、お預かりして、それぞれの書類作成をしてお渡しします。
雑務としては、処理の終わった処方箋の保管、管理や薬袋や調剤用の容器の在庫管理、パソコンなどのアップデート作業などもあります。
薬局によっては調剤に使う機械の掃除などを任される場合もあります。
調剤薬局事務のレセプト業務について
先ほど触れた「レセプト業務」ですが、こちらは毎日の業務とは別に月に一度、必ず行う業務になります。
「レセプト」とは医療機関において「診療報酬明細書」のことです。
一般的に保険が適用される診療や治療の場合、患者さんはかかった金額の3割(高齢者は1~3割)を自己負担し、残りの7割の費用を保険者(社保・国保など)に請求することになります。
この保険者負担分を請求する作業が「レセプト」です。
レセプトは毎月作成し、翌月5日までに前月分を審査支払機関へ送付します。
そこでの審査を経て、診療報酬として薬局へ支払われます。
万が一、記入内容にミスや不備がある場合は、再度作成し、翌月以降に改めて請求し直すことになります。
これを「返戻」と言います。
再請求すると、その分支払われるのが遅くなるので、売り上げに影響します。
そうならないために、間違えないように丁寧に作業していくことが大切です。
月末のレセプト業務は、医療現場でのIT化に伴い、オンライン請求となるので紙媒体の時と比べると格段に時間は短縮されており、業務時間内に完了できる作業となっています。
調剤薬局事務のその他の業務として…
棚卸があります。
薬局の規模によっても頻度が違うでしょうが在庫を把握するために、少なくとも一年に一度は棚卸するところがほとんどです。
棚卸は通常業務をこなしながら、在庫している薬剤全てを数えて、データ入力をするので、それなりの時間をとられる作業となります。
場合によっては、業務時間外に行うこともあるかもしれません。
調剤薬局事務で働くメリット・デメリット
調剤薬局事務で働くメリットは、職場の経営方針やスタッフの人数などにもよりますが残業が少なく、定時に帰れる場合も多いので、子育てや介護をしながらでも、ライフスタイルに合わせて働きやすいことです。
月末にはレセプト業務がありますが、現在はオンライン請求になっているので就業時間内に終わらせることが可能です。
私のように必ずしも医療事務系の資格を持っていなくても働くことが可能ですし働きながら、薬についての知識も身につくので自分の生活にも役立てることができます。
これからの超高齢化社会では、薬を必要とする人がますます増えていくでしょう。
調剤薬局事務の求人は全国にあるので、どこでも仕事を見つけやすく、長く勤めることができます。
辞めて再度働きたい場合にも、キャリアを生かすことができます。
デメリットというと少し違うかもしれませんが、データを入力する際には、薬の名前や剤形、容量に注意する必要があります。
他にも、単位や回数を間違ってしまうと薬情や薬袋の情報を頼りにお薬を飲んでいる患者さんは気づかずに誤った服用をしてしまう可能性もあります。
常に命に関わる事故に繋がるかもしれないことを忘れず、直接薬を触ることは少なくても緊張感をもって、日々仕事に取り組むことが重要です。
調剤薬局事務に求められるスキル
調剤薬局事務の代表的な資格として「調剤事務管理士(R)」「医療保険調剤報酬事務士」「調剤事務実務士(R)」「調剤報酬請求事務専門士」などがあります。
これらはすべて民間資格です。
他にも事務系の資格ではありませんが、「登録販売者」という資格もあります。
店舗などで一般医薬品を販売するための専門資格です。
こちらは厳密には国家資格ではありませんが、国が認めている資格になります。
先にも書きましたが、調剤薬局事務はこのような特別な資格がなくても就職することができます。
基本的なパソコンの操作ができれば、薬や保険の知識は働いているうちに徐々に身につくので心配しなくても大丈夫です。
とは言え、資格を取得することで未経験の場合でも、採用してもらえる確率が高くなったり、他の応募者と差別化を図ることができます。
医療業界の知識や情報は早いスピードで変化していくので資格取得のために勉強した知識だけで仕事ができるものではなく、資格に甘んじず、常に新しい知識にアップデートしていく必要があることは覚えておいた方がいいでしょう。
資格取得し、薬や保険についての知識があれば、仕事がやりやすくなるのは間違ありませんが、それ以上に大事なことは「人対人」を意識できるかどうかです。
患者さんや職場の人に対して、思いやりを持つこと、細やかな気配りができること、責任感を持って接することが一番重要なスキルとなります。
特に患者さんは身体や心が弱っている状態で来局されます。
その方々に寄り添い、親身になってあげられることができる人はこの仕事にやりがいを感じることができるでしょう。